vol. 2
「sel sal sale(セルサルサーレ)」 オーナーシェフ 濱口昌大氏

日々真摯に食材と向き合い独自のスタイルで美味しさを創造するリーダーシェフの思考・料理・感性から学びを得る、料理のプロフェッショナルに向けたマスタークラス『PASTA MASTER CLASS by DE CECCO~My Story Pasta 自分を語るパスタ~』。
第2回目は柔軟で自由な発想から日本の食材を取り入れたイタリア料理「sel sal sale(セルサルサーレ)」 オーナーシェフ 濱口昌大氏をリーダーシェフに迎えました。

〜 この記事はこんな方におすすめ 〜
- DE CECCOの魅力、可能性を知りたい。
- 一流の料理人の考え方・感性・調理技術を学びたい。
- 自身の料理をさらに向上させるヒントを得たい。

― 濱口シェフの料理人人生を語る上で、欠くことのできない土地はどこですか?
濱口シェフ(以下敬称略 濱口)東京です。生まれも育ちも大阪ですが、料理人人生は東京でスタートしました。プーリア州で修行の後ヨーロッパ・北欧10カ国を歴訪しましたが、庶民的な店から高級店に至るまで東京ほど料理の質が高い都市はありませんでした。食材が集まる東京の地の利を生かし世界中の調味料・食材を柔軟に取り入れています。生産者や陶芸家とは顔の見える関係性を築いています。
― 様々な地の食材が集まる東京において何を軸にメニューを考えますか?
濱口まずは自分なりの類似点をみつけます。例えばイタリアと日本の類似点。地図上の経緯度は無視して南に位置する「カラブリア州」は「沖縄」に相当するな、というように。食材や調味料使いが奇抜だと思われがちですが、類似点が起点の連想ゲームから導き出しています。食材のつくられた気候風土や「食べていたもの」からも考えます。
― ご考案頂いたパスタメニューを紹介ください。
濱口「東京の食」は伝統的な料理ではなく、食材の集積地ゆえ「時代や人々の嗜好に合わせ変遷していく食」と捉えています。今回は夏に合う氷でキリッとしめた冷製カッペリーニ、土地の類似点から発想したオレキエッテ、長崎五島列島の郷土料理から着想したキタッラ、個性的なラグーを目指したミッレリーゲという自分なりの自由で柔軟な発想による4つのパスタ料理に落とし込みました。
<濱口シェフによるMy Story Pastaのデモンストレーション> ●1品目: DE CECCO No.9 カッペリーニ 「天然真鯛の冷製カッペリーニ」

様々な魚種から厳選した鯛とトマト、オイルを合わせます。パスタ1に対して1.2倍のオイルを使用するため、とにかく香りのないオリーブオイルを使います。茹で上げたカッペリーニは氷水でキリっとさせ、ザルを10回振り、少し水気を残してボウルへ投入。60回混ぜ合わせます。シェフが大切にする旨味とコクを得るための「回数」は重要なポイントです。

オイルがトマト・鯛・キャビア・塩のまとめ役となり、もたつくことなく旨味やコクを引き出します。「店名『sel(フランス語)sal(スペイン語)sale(イタリア語)』は塩のことです。料理に影響するため『百姓庵100ZEN海の塩』をはじめ多種ある塩を適切に選びますが、“塩”は数ある要素の1つです」と濱口シェフは言います。
●2品目: DE CECCO No.91 オレキエッテ 「オレキエッテ 桜エビのロザマリーナとスパイスモリーカ」

桜エビのロザマリーナソースはコク、旨味が十分にあるため、やわらかめに茹で上げたDE CECCO No.91オレキエッテとはサッサッサと和える程度。パスタ料理はソースを吸わせるのか、吸わせないのか、その見極めが重要です。

ロザマリーナに韓国産唐辛子を使用した濱口シェフの思考の流れを追ってみます。〔(1)唐辛子・しらす・塩でつくる発酵食ロザマリーナはカラブリア版キムチ。(2)キムチと言えば韓国。韓国産唐辛子は辛味がやさしく旨味とコクがあって良いかもしれない。(3)自分が好きな桜エビも加えてみよう。(4)カラブリアの位置は日本では沖縄にあたる。沖縄発祥のコーレグース(島トウガラシの泡盛漬け)と、ソテーした島ラッキョウを添えよう。(5)パスタはDE CECCOオレキエッテが合うと確信。〕 決して奇をてらったのではなく、濱口シェフの脳内では筋の通った自然な流れで辿り着く食材選びです。

モリーカに使用するスパイスがシードなので噛むと香りが広がり味に変化があります。旨味たっぷりパスタに、島ラッキョウのソテーがさっぱり感を与えます。
●3品目: DE CECCO No.13 マッケローニ・アッラ・キタッラ 「フグの白子のキタッラ 自家製カラスミ」

ハコフグの肝を使った長崎・五島列島の郷土料理「かっとっぽ」から着想。フグの白子を使い、ニンニク、アンチョビ、仕上げに自家製カラスミと材料はシンプルに。和の調味料を使用する時は隠し味となるように工夫。フグの白子のからみがよい、DE CECCO社のあるアブルッツォ州を代表するパスタ「キタッラ」を使用しています。

フグの白子・ニンニク・アンチョビが太めのキタッラに良く絡み合い、カラスミの塩味はすぐに旨味に変わります。後味は不思議とさっぱりしています。
●4品目: DE CECCO No.25 ミッレリーゲ 「炭焼き鴨のラグー ミッレリーゲ」

個性が出しづらいと言われるラグー。鴨を真っ黒に炭焼きし最大限にコクを引き出しミンチにした旨味が強いソースはパスタと1:1程度にしてミッレリーゲの味を十分に味わえるようにしています。農家さんに頂いた藁で香り付けした鴨のローストを添えて、イタリアらしい盛り付けのピアットウニコに仕立てました。

炭火焼鴨肉の力強い旨味とコクがありながらも、 パスタの味わいをしっかり感じます。チーズが脇役に徹するほどに各食材の味を楽しめます。

デザート代わりにフォアグラをエスプレッソ『Largo』が練りこまれたパンにのせて。

私はお客様へ「食の楽しみ」をお伝えしたい。そのために食材・調味料を厳選。「旨味」「コク」を大切に単調な味に仕上げず、ワクワク感と共に食べ進むように提供方法も工夫。修業時代からDE CECCOを使い続けていることを含めて、お客様の「おいしい」につながる1つ1つの積み重ねを大切にしています。

マスタークラス参加者の声
- 濱口シェフの説明を聞いて、おいしさの「理屈」がわかりました。
- 余談の「冷凍・解凍を繰り返してつくる、通常とは異なるトマト液の製法」に興味を持ちました。
- ロザマリーナ、スパイスモリーカを自分でもつくり、様々な料理に活用してみたいと思います。

一流の料理人の思考・感性・料理を学ぶこのマスタークラスには、真摯に食材と向き合い至福の料理を創造し続ける食のプロである皆さまだからこそ得られる新たなヒントがあると思います。食のプロが互いを高めあう有意義な知の交流ができる「場」として、『PASTA MASTER CLASS by DE CECCO~My Story Pasta 自分を語るパスタ~』を今後も開催して参ります。

DE CECCO No.9 カッペリーニ
天然真鯛の冷製カッペリーニ

<材料> 1人前
- DE CECCO No.9 カッペリーニ
- 50g
- 天然真鯛切り身 (生食用)
- 50g
- トマト
- 50g
- 天然塩
- 2g
- ピュアオリーブオイル
- 60g
- レモンゼスト
- 適量
- キャビア
- 適量
<つくり方>
- 鯛を薄切りにしてボウルに入れる。
- トマトも適度な大きさに切りボウルに入れ、天然塩を振る。
- 2のボウルにピュアオリーブオイルを注ぎ、冷蔵庫で冷やしておく。
- カッペリーニを2分30秒茹で、氷水で冷やし、ザルで10回水を切る。
- 3のボウルに4のカッペリーニを加えて60回混ぜ合わせ、皿に盛り付け、レモンゼスト、キャビアを盛り付ける。

DE CECCO No.91 オレキエッテ
オレキエッテ 桜エビのロザマリーナとスパイスモリーカ

<材料> 1人前
- DE CECCO No.91 オレキエッテ
- 25g
- ニンニク
- 3g
- ピュアオリーブオイル
- 適量
- ブランデー
- 適量
- ブロード
- 適量
- トマトソース
- 30g
- E.V.オリーブオイル
- 適量
- 島ラッキョウ
- 適量
- コーレグース
- 適量
- ●A:桜エビのロザマリーナ
- 40g
- ●B:スパイスモリーカ
- 適量
<下準備>
A: 桜エビのロザマリーナ (1回の仕込み分)
桜エビ 400g、塩 12g、韓国産唐辛子 大さじ2、ベルガモットオイル(ベルガモットの皮を漬けて香りを移したオリーブオイル) 大さじ3、煎った唐辛子100g、白ワインビネガー10g、オリーブオイル50g、塩ひとつまみを合わせた唐辛子ペースト 大さじ1.5、E.V.オリーブオイル 大さじ1
B: スパイスモリーカ (1回の仕込み分)
パン粉100g、コリアンダーシード大さじ3、フェンネルシード小さじ1、マスタードシード小さじ1、キャラウェイシード小さじ1、ホワイトペッパー小さじ1/2、白胡麻大さじ1
スパイスをローストして、煎ったパン粉と合わせる。
<つくり方>
- ニンニクとオイルを火にかけ、香りが出たらロザマリーナを軽く炒める。
- ブランデーを加え、アルコールが飛んだらブロード、トマトソースを加える。
- 茹で上げたオレキエッテと絡めてE.V.オリーブオイルとコーレグースと合わせて盛り付ける。
- ソテーした島ラッキョウ、スパイスモリーカを散らす。

DE CECCO No.13 マッケローニ・アッラ・キタッラ
フグの白子のキタッラ 自家製カラスミ

<材料> 1人前
- DE CECCO No.13 マッケローニ・アッラ・キタッラ
- 30g
- ニンニク
- (パスタに対して)15%
- アンチョビ
- (パスタに対して) 8%
- オリーブオイル
- 適量
- フグの白子
- 25g
- 白ワイン
- 適量
- ブロード
- 適量
- E.V.オリーブオイル
- 適量
- 自家製カラスミ
- 適量
<つくり方>
- ニンニクとオリーブオイルを火にかけ、香りが出たらアンチョビを加えて炒める。
- フグの白子をさっと炒め、白ワインを加える。
- アルコールが飛んだらブロードを加え、白子に火を入れた後、ハンドミキサーで撹拌する。
- 3に茹で上げたキタッラを加え、和える。
- E.V.オリーブオイルと和えて皿に盛り、カラスミを散らす。

DE CECCO No.25 ミッレリーゲ
炭焼き鴨のラグー ミッレリーゲ

<材料> 1人前
- DE CECCO No.25 ミッレリーゲ
- 25g
- 『銀の鴨』もも肉
- 塩
- 鴨の1.1%
- 薄力粉
- 適量
- ニンニク
- 適量
- 玉葱4:人参2:セロリ1
- (上記の割合でみじん切りに
したもの) - 鴨肉の60%
- 塩
- 適量
- オリーブオイル
- 適量
- トマトソース
- 適量
- 赤ワイン
- 鴨肉の75%
- 鴨出汁(鴨骨を焼き水で6時間煮たもの)
- 適量
- 香茸パウダー(香茸を乾燥させたもの)
- 適量
- バター
- 適量
- グラナパダーノチーズ
- 適量
- 炭オイル(炭の香りを移したオイル)
- 適量
<つくり方>
- 鴨肉をさばき、骨付きもも肉を1.1%の塩でマリネする。
- 鴨肉を炭火で香ばしく焼き、冷やして香りを馴染ませる。
- 2をミンチにし、薄力粉をまぶして鴨の脂で焼く。
- ニンニクとオリーブオイルを火にかけ、香りが出たら取り出して、みじん切りにした野菜を飴色まで炒める。
- 3、4、鴨出汁、1/5に煮詰めた赤ワインを加えて45分ほど煮込む。
- トマトソース、香茸パウダーを加える。
- 茹で上げたミッレリーゲとソースを合わせて、バター、炭オイル、グラナパダーノチーズを和え盛り付ける。

DE CECCO No.9
カッペリーニ
最大の魅力は絶妙な細さだと思います。氷で締めると上品な食感に仕上がります。

DE CECCO No.91
オレキエッテ
表示よりも少し長めに茹でたモチモチの食感のオレキエッテは、ソースがよく絡みます。

DE CECCO No.13
マッケローニ・アッラ・キタッラ
ギターを語源とする断面が四角いキタッラとクリーミーなソースの相性は抜群です。

DE CECCO No.25
ミッレリーゲ
ミッレリーゲは少し噛み応えのある食感に茹であげると、パスタとソースを存分に味わえます。


sel sal sale (セルサルサーレ) オーナーシェフ 濱口昌大氏
1979年大阪生まれ。25歳で「リストランテ ルクソール」マリオ・フリットリ氏に師事。2010年に渡伊。一つ星店「リストランテ ソットラルコ」で修業。世界の料理を学ぶためヨーロッパ・北欧の10カ国ほどを巡る。帰国後、2014年三軒茶屋に「セルサルサーレ」を開店。2017年に恵比寿へ移転。丁寧な塩つかいで日本食×イタリアンをコンセプトに繊細な旨味のバランスを追求。クリエイティブな料理を生み出している。


「sel sal sale (セルサルサーレ)」
東京都渋谷区恵比寿西1-16-7 ハギワラビル 1F
TEL 03-6416-5230
火曜〜日曜 17:30~23:00
※都合により18:30オープンの日あり。
ランチ 土曜・日曜 11:30~13:15L.O.(14:45Close)
定休日:毎週月曜日(+不定休あり)


「天然真鯛の冷製カッペリーニ」 に合わせて
ADAMI BOSCO DI GICA BRUT NV「オレキエッテ 桜エビのロザマリーナとスパイスモリーカ」には
TENUTA DEL CONTE「フグの白子のキタッラ 自家製カラスミ」とはワインと日本酒
SIERRA CANTABRIA 2022菩提酛仕込み 醍醐のしずく
しっかりとした味わいの「炭焼き鴨のラグー ミッレリーゲ」に
Château HAUT MALLET 2020
を参加者のお好みで合わせていただきました。